日本人自身が異世界的な日本を描いてきた
―『ブレット・トレイン』はまさに、大胆なアプローチが満載ですね。
アヴちゃん:私自身アクションを経験したことがありますが、そういった人間からすると「なんてリッチなアクションなんだろう!」と感じました。センスが良くて、流れも良くて「自分もアクションをしたい!」と思うくらい本当に素敵でした。
日本を誇張している部分ももちろんありますが、そもそも私たち日本人自身がアニメーションなど多くの作品で異世界的な日本を描いてきていますよね。そこにハリウッドの一流の方々が集い、面白い解釈がなされていて「こんな超高速列車に乗ってみたい」と思えました。そして何より日本愛にあふれた音楽のチョイス! 特にカルメン・マキさんの「時には母のない子のように」には「そこを選ぶか!」とグッときました。私はタランティーノ映画も日本の音楽の使い方が抜群だと思っているのですが、そのシナジーも感じましたし、日本の音楽が持つムードがすごく活かされていたと思います。
アヴちゃん(女王蜂)
リーチ:すごく嬉しいです。僕たちは日本のポップなバージョンを作ったけれど、アメリカ人である自分の日本に対する解釈が受け入れてもらえるか、内心すごく怖かったから。
ただ、いまアヴちゃんがおっしゃったとおり、日本の方もアニメや漫画、音楽を通して誇張された日本を描いてきていますよね。『ブレット・トレイン』では僕たちの日本のポップカルチャーに対する愛を、リスペクトをもって描いたつもりです。だから、そう言ってもらえて良かった!(と胸をなでおろす)
アヴちゃん:海外の方々は「神様」という絶対的な存在を信じている方が多いかと思いますが、日本は妖怪やおばけなど、色々なものを全体的に信じているところがあります。幼少期からアニメに触れて育ってきた人も多いですし、その一人である私は、誇張されたジャパニズムをすごく面白いと感じました。
『ブレット・トレイン』
―リーチ監督はこれまで数多くの日本要素を含んだ作品に携わられてきましたが、それでもまだ「怖い」という感覚がおありなのですね。
リーチ:リスペクトしているし、自分の人生においても深い縁があるからこそ、その感情はありますね。
僕はアメリカの中西部の出身ですが、日本の文化に初めて触れたのはマーシャルアーツ(武芸)でした。そして、映画においてはウォシャウスキー姉妹の『マトリックス』(1999年)。このシリーズでふたりの日本文化に対する想いに触れたこと、そしてアニメスタイルを踏襲したアプローチに影響を受けました。
デヴィッド・リーチ監督 アヴちゃん(女王蜂)
『ブレット・トレイン』
世界で最も運の悪い殺し屋レディバグ。謎の女性から電話越しにブリーフケースを奪うよう指令を受けたレディバグは、気合たっぷりに<東京発・京都行>の超高速列車に乗り込む。しかし、それは彼にとって人生最悪な120分の始まりだった。次々と乗りこんでくるキャラ濃すぎの殺し屋たちが、全く身に覚えのないレディバグに襲い掛かる。簡単な指令を果たしてすぐ降りるだけの任務のはずだったのに…… 時速350kmの車内で繰り広げられる、決死のバトル! 予期せぬ最悪が折り重なり、終着点・京都に向けて<絶望>が加速する――
原作:伊坂幸太郎「マリアビートル」(角川文庫刊)
監督:デヴィッド・リーチ
脚本:ザック・オルケウィッツ
出演:ブラッド・ピット
ジョーイ・キング アーロン・テイラー=ジョンソン
ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路
真田広之 マイケル・シャノン ベニート・A・マルティネス・オカシオ
サンドラ・ブロック ローガン・ラーマン ザジー・ビーツ
マシ・オカ 福原かれん
制作年: | 2022 |
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2022年9月1日(木)より全国公開