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岡田准一が自らアレンジ!!『燃えよ剣』の殺陣は必見! 戦国時代の伝説的な“剣豪トリビア”も紹介

岡田准一が自らアレンジ!!『燃えよ剣』の殺陣は必見! 戦国時代の伝説的な“剣豪トリビア”も紹介
『燃えよ剣』Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray 価格:7,480円(税込)
DVD 価格:6,380円(税込)
発売元:アスミック・エース
販売元:東宝
©2021「燃えよ剣」製作委員会

夏祭りと盆踊りのほろ苦い記憶

2022年の夏も暑かった。愛車のオートバイで都内を走っていても、フルフェイスのヘルメットでは暑さでフラフラになる。はめていたステンレスのSEIKOの腕時計がチンチンに熱くなって、信号待ちで急いで外す酷暑。ただ海には行けなかったもののプールには行けたし、バーベキューもできた。ビールを飲みながら、テレビで甲子園大会も見れた。

夏の思い出は今年もできたが、一つ心残りなのが、大好きな夏祭りに行けていないことだ。子供の頃、私は夏祭りが大好きだった。近所の地蔵盆のお祭りに、お袋からお小遣いをもらい、友達と繰り出すのだ。ピーヒャラドンドンと笛や太鼓の音色、通りに出ている屋台から、たこ焼きや焼きそばのソースの焦げた匂い、女の子が浴衣姿で歩きながら食べる綿菓子にかき氷。こんな日本の夏祭りが私は大好きなのだ。

中でも私が子供の頃、大好きだったのが出店の「型抜き」。薄っぺらく硬いガムの表面に色んな絵が線で書いてあり、少し窪んでいるのだ。その線に沿って綺麗に型が抜けたら、出店のおじさんがチェックして、合格ならば景品がもらえる。曲線が多く難しい絵ほど、いい景品になる。当時、我々小学生は家から安全ピンを持って行き、針の先っちょで絵の線に沿って型を抜いていく技を駆使していたが、それでもなかなか上手くいかない。傘の絵などは取手の曲がった部分が細く、いつも最後に失敗してしまう。この型抜きに子供の私はどハマりしていたものだ。

ザ・かたぬき5箱セット(6枚入り/1箱)

そしてもう一つ大好きだったのが、提灯が大量にぶら下がった櫓を囲んで躍る盆踊り。これも子供ながらに大好きだった。近所のお宮さんから太鼓の音が聞こえて来ると、もうワクワクが止まらない子供だった。櫓の上には大きな太鼓、そしてスタンドマイクに向かって近所のおじさんが、浴衣姿で扇子を広げて音頭を歌う。うちの地元は江州音頭を歌って躍るのだが、昼間には何とも思わない近所のおじさんが、見事な節回しで江州音頭を歌う姿はカッコいいと思って見ていた。そしていつか大人になったら櫓の上で歌ってみたいとも思っていた。

そんな夏のある日、「今年の盆踊りは仮装も大歓迎」とチラシに書かれていた。小学4年生の私は意を決して、押入れのおもちゃ箱から、当時持っていたゴム製のフランケンシュタインのマスクを取り出し、盆踊りに向かうことに。夕飯を早めに済ませ、玄関を出てフランケンシュタインのお面を被り、颯爽と盆踊り会場に向かった。今なら子供がモンスターに扮していればハロウィンの雰囲気もあるが、時は昭和、小さい子供が“顔だけフランケンシュタイン”という異様な姿で盆踊りの櫓の前に来てみると、見事に浮いていた。誰も仮装などやっていないのだ。

恥ずかしかった。しかし、フランケンシュタインのマスクを外すのはもっと恥ずかしい。もちろん周りの人たちは中身が私だと気づいていたとは思うが、ここで正体を明かすのは恥ずかしすぎる。結局、私は盆踊りの輪にも入れず、しょんぼりと家に帰った。そんな夏の夜のことを今でも覚えている。

岡田准一アレンジの殺陣に刮目!『燃えよ剣』

さて、今回のオススメ映画は2021年公開の『燃えよ剣』。原作は司馬遼太郎先生、監督が原田眞人さんで主演は岡田准一さん。このお二人は2017年公開の映画『関ヶ原』以来のタッグで、以前このコラムでも取り上げさせてもらったのだが、この『燃えよ剣』は、あの新撰組の鬼の副長・土方歳三を中心に幕末の動乱を描いている。もちろん、この土方を演じるのが岡田さんなのだが、もはやジャニーズ所属の云々という領域を超えた、ハイレベルなアクション俳優と言っても過言ではない見事な殺陣! 土方歳三の独特な剣捌きを、これでもか! と堪能できる。

ちなみに、この作品に私の芸人仲間であり親友、はんにゃの金田哲が新撰組隊士・藤堂平助役で出演しているのだが、彼も学生時代に剣道部で鳴らした有段者で、剣捌きは見事なもの。そんな彼がこの映画の撮影後に「岡田くんはマジですごい!」と言っていた。ほとんどの殺陣のアレンジを岡田くん自身が考えていたそうなのだ。

さらに金田から聞いた話で、この作品でも一番の名場面である池田屋の戦闘シーンについて。リハーサルではリハ用の2階建てのセットが組まれ、よーいスタート! で一斉に役者人が動き出すのだが、カメラが映していない場所の役者たちでさえも、完璧に動かなければ原田監督に厳しく注意されたそうだ。そして本番もまさに生の舞台の様に、あのシーンは繰り広げられていたのだという。そこに原田監督のカットバックの速さによって、場面の緊迫感と臨場感が溢れるシーンとなっているのだ。

ウーマン村本の早口キャラが幕末の密偵役にドンピシャ!

他にも、伊藤英明さん演じる芹沢鴨を土方たちが粛清する場面や、伊東甲子太郎を油小路町で仕留め、仲間だった元新撰組隊士の御陵衛士たちと闘うシーンも緊迫感があって大好きなのだが、私がこの作品で一番目を見張ったのが、ウーマンラッシュアワーの村本大輔くんが演じた山崎丞だ。

山崎は剣を振るって戦闘に参加することはないが、密偵として優秀な働きをし、池田屋でも従業員になりすまして潜入し活躍する。この山崎が、村本くんのあの早口のキャラを融合させた見事な人物に仕上がっているのだ。原田監督の演出と村本くんの演技力には驚かされたし、大いに楽しませてもらった。

本作が幕末、新撰組という刹那的な戦闘集団をたっぷり堪能できる素晴らしい作品であることは間違いない。ということで今回の雑学は、幕末と同じく数々の剣豪が登場した戦国時代から、私の好きな戦国時代の剣豪を二人ご紹介しよう。

柳生新陰流は武田信玄なくしては生まれなかった!?

まず一人目に挙げる剣豪は、上泉信綱(かみいずみのぶつな)。彼は現在の群馬県前橋市にあった上泉城の城主の次男として生まれ、幼い頃から剣術の稽古に明け暮れていた。信綱は体格にも恵まれ、教養と品格もあり文武両道に優れていた。そして箕輪城(現在の群馬県高崎市)の城主「長野業正」(ながのなりまさ)の家臣として戦場で数々の戦功を挙げる。しかし1561年、甲斐国から攻めて来た武田信玄軍と戦い、あえなく箕輪城は落城。捕らえられた信綱の腕を惜しんで信玄から「家臣にならないか」と誘われる。

ところが信綱は降伏には応じたものの家臣になることは拒絶し、自身の起こした流派、新陰流(しんかげりゅう)の普及のために全国を回りたいと申し出る。その真意を知った信玄は信綱の申し出を快諾し、他家への仕官を絶対しないという条件付きで諸国流浪の旅に送り出したという。ちなみに信玄はよほど信綱を気に入っていたのか、実はそれまで“秀綱”と名乗っていた彼に信玄の“信”の文字を与え、この時から信綱と名乗ることになったのだ。

その後、信綱は全国各地の剣豪を訪ね、新陰流の秘技を披露。すると誰もが信綱の剣技を見て、あまりのレベルの違いに恐れをなし、立ち会うことすらできなかったと言われている。そんな数少ない立ち合いの一つが、大和国(現在の奈良県)で武芸者として知られていた、柳生宗厳(やぎゅうむねよし)とのもの。剣術に自信を持っていた宗厳だったが、信綱の弟子にすら勝てず、なんとか頼み込んで信綱と手合わせをするのだが、立ち会うなり信綱から「その構えなら刀を取りますぞ」と告げられ、次の瞬間、本当に宗厳が握っていた刀を奪い取られてしまった。これが信綱が編み出した新陰流の秘技、“無刀取り”である。

あまりの完敗に衝撃を受けた宗厳は、その場で信綱に弟子入りを志願し、一から剣技の鍛錬に励んだ。そして2年後、師匠の信綱から免許皆伝をもらい、柳生新陰流を立ち上げるのだ。ちなみに、この柳生宗厳がのちの柳生石舟斎で、私の大好きな柳生十兵衛のお祖父ちゃんなのである。

話を戻そう。その後の上泉信綱は京都に招かれ、室町幕府の将軍の足利義輝や時の天皇、正親町天皇の前で新陰流を披露し、天下一と認められる。天皇と将軍両方から認められた剣豪は後にも先にも信綱たった一人。ただ、その後の信綱の行方はわからなくなってしまう。しかし新陰流は弟子の柳生宗厳とその一族に受け継がれ、天下一の兵法として徳川家に認められるのである。

伊藤一刀斎、生まれ持ったパワーとセンスで全国に敵なし

もう一人挙げたいのが、戦国時代きっての無頼派剣豪、伊藤一刀斎(いとういっとうさい)。彼は戦国一謎に包まれた剣豪で、出生地も諸説存在する。一番有力な説が、伊豆大島の出身で大島に流された流人の子供というもので、わずか14歳で大島から113キロも泳いで脱出したと言われているのだ。その後、伊豆国の三島大社の社殿の床下で暮らしていたところ、この地で道場を構えていた富田一放(とみたいっぽう)と立ち会うことになり、一刀のもとに打ち倒す。驚くことに、このとき一刀斎はまったく剣術を学んでおらず、持って生まれた圧倒的なパワーと激しい気性のみで打ち勝つのである。

この決闘により一刀斎は、流れ者の浮浪児から三島大社の客人に昇格。しばらくは三島大社の用心棒を務め、神社から名刀を譲り受けると、その刀で襲ってきた盗賊数十人のうち7人をたちまちに倒し、瓶(かめ)の陰に隠れた一人を瓶ごと一刀両断に切り捨ててしまった。それ以降、この刀は“瓶割刀”と呼ばれ、一刀斎の愛刀になるのである。

そして、より強い人物を求めて江戸に行き剣術修行を始め、5年で独立。そこから諸国で数多くの決闘を繰り返しながら勝利を収める。最も有名なのは、相模国(現在の神奈川県)で中国から来た武芸者相手に「扇子1本で充分」と豪語し立ち会うと、すかさず間合いを詰め、扇子で相手の木刀を跳ね上げ、ガラ空きになった相手の脳天に扇子を落ち下ろした。あまりの名人芸に、伊藤一刀斎の名はたちまちに知れ渡ったという。

伊藤一刀斎 上 (徳間文庫)

一刀斎は生涯無敗を誇ったが、強い者との立ち会いばかりに執着して、自らの流派を広げることには無頓着だった。そして晩年、弟子の小野忠明(おのただあき)に愛刀の瓶割刀を譲った後、行方がわからなくなる。ただ、この小野忠明が世に一刀流を広め、小野派一刀流を起こし、柳生新陰流より先に徳川家の剣術師範に迎えられるのだ。

江戸時代になると、ここから北辰一刀流などの一刀流の流派が誕生し、幕末には坂本龍馬、新撰組の藤堂平助などが北辰一刀流を学ぶことになる。そして明治になり剣術が剣道に生まれ変わった時、基盤となったのが一刀流の所作だった。戦国一自由人で思いのままに生きた伊藤一刀斎の剣術が、現在も親しまれている剣道のルーツになっているというのが、歴史の実におもしろいところである。

文:桐畑トール(ほたるゲンジ)

『燃えよ剣』はBlu-ray&DVD発売中、Amazonプライムほか配信中

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『燃えよ剣』

武州多摩の“バラガキ”土方歳三は、「武士になる」という熱い夢を胸に、近藤勇、沖田総司ら同志と共に京都へ向かう。徳川幕府の後ろ盾のもと、芹沢鴨を局長に擁し、市中を警護する新選組を結成。土方は副長として類まれな手腕と厳しい法度で組織を統率、新選組は倒幕派勢力制圧に八面六臂の活躍を見せる。お雪と運命的に出会い惹かれあう土方だったが、時流は倒幕へ傾いていき——

監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎「燃えよ剣」(新潮文庫刊/文藝春秋刊)

出演:岡田准一 伊藤英明 柴咲コウ 鈴木亮平 山田涼介
   尾上右近 山田裕貴 たかお鷹 坂東巳之助 安井順平
   谷田歩 金田哲 松下洸平 村本大輔 村上虹郎
   阿部純子 ジョナス・ブロケ
   大場泰正 坂井真紀 山路和弘 酒向芳 松角洋平
   石田佳央 淵上泰史 渋川清彦 マギー 三浦誠己
   吉原光夫 森本慎太郎
   髙嶋政宏 柄本明 市村正親

制作年: 2020